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大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)5585号 判決

第一事件原告(反訴被告)

東京海上火災保険株式会社

第一事件被告(反訴原告・第二事件原告)

服部裕之

第二事件被告

上野薫

主文

一  被告服部は、原告会社に対し、金二七六万四七五七円及びこれに対する昭和六二年六月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告服部の反訴請求及び第二事件請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はすべて、被告服部の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(第一事件について)

一  請求の趣旨

1 主文第一項同旨

2 訴訟費用は、被告服部の負担とする。

3 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告会社の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告会社の負担とする。

(反訴について)

一  請求の趣旨

1 原告会社は、被告服部に対し、金四二八万九五八八円及びこれに対する昭和六一年八月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、原告会社の負担とする。

3 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 被告服部の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、被告服部の負担とする。

(第二事件について)

一  請求の趣旨

1 被告上野は、被告服部に対し、金四二八万九五八八円及びこれに対する昭和六一年八月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、被告上野の負担とする。

3 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 被告服部の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、被告服部の負担とする。

第二当事者の主張

(第一事件について)

一  請求原因(左記1、2を選択的に主張する。)

1 不法行為

(一) 保険契約の締結

原告会社は、被告上野との間で、昭和六〇年一一月三日ころ、左記の自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。

被保険者 被告上野

保険期間 昭和六〇年一一月三日から昭和六一年一一月三日まで

保険の目的 普通乗用車(神戸五九そ四〇二一、以下「上野車」という。)

対人保険金額 金一億円

(二) 事故の発生(以下「本件事故」という。)

日時 昭和六一年八月一五日午後一〇時二〇分ころ

場所 大阪市住吉区長居四丁目一番二二号先路上

加害車両 上野車

右運転者 被告上野

被害車両 普通乗用車(神戸五九ゆ一六八五、以下「服部車」という。)

右運転者 被告服部

事故態様 上野車が、対面赤信号のため服部車の後方に停車した後、同信号が青に変わつたので前方交差点を左折すべく服部車に続いて発信したところ、服部車が急停止したために同車後部に追突した。

(三) 原告会社に対する詐欺行為

(1) 事故日に関する虚偽通知

イ 本件保険契約の準拠する自家用自動車保険普通保険約款(以下たんに「約款」という。)第六章第一四条第三号には、保険契約者は事故が発生したことを知つたときは保険会社に対し事故発生の日時を遅滞なく書面で通知することを要し、同章第一五条には、保険会社は、保険契約者が保険会社に対し事実と異なる事故発生の日時を通知したときは、保険金支払義務を負わない旨が規定されている。

ロ 被告服部は、本件事故により傷害を受けたとして原告会社から保険金の支払を受けることを考えたが、本件事故発生の日をそのまま原告会社に通知すると、同被告が事故後約一か月間なんら治療や休業をしていないことが明らかになり、原告会社から受傷の事実を疑われて保険金の支払を拒絶されると予想し、被告上野と共謀の上、昭和六一年九月一六日ころ、原告会社に対し本件事故発生の日を昭和六一年九月一六日と偽つて通知し、その結果、原告会社は、右虚偽通知により本件事故に基づく保険金支払義務を免れたにもかかわらず、右義務があるものと誤信し、後記(四)の損害を被つた。

(2) 損害発生に関する虚偽報告

被告服部は、保険金を騙取しようと企て、被告上野及び原告会社に対し、昭和六一年九月一六日ころ、本件事故による受傷の事実がないのに頸部捻挫の傷害を受けた旨通知したうえ、後日、右傷害による治療及び休業の必要がある旨の虚偽の報告をし、その結果、原告会社は、右傷害に対する損害賠償に関し保険金支払義務があるものと誤信し、右同様の損害を被つた。

(四) 損害

(1) 休業損害として同被告に対する保険金支払

昭和六一年一〇月一五日 金二九万八一四二円

同年一一月一八日 金三五万五四七七円

同年一二月二三日 金一一二万一〇七六円

昭和六二年二月一七日 金一八万三四七二円

同年二月二〇日 金一六万四八〇〇円

(2) 治療費として

医療法人錦秀会阪和病院(以下「阪和病院」という。)に対する保険金支払

昭和六一年一〇月一五日 金一万九六二〇円

医療法人中本会中本病院(以下「中本病院」という。)に対する保険金支払

昭和六二年二月九日 金一万六三六八〇円

(3) 治療費立替金として被告上野に対する保険金支払

昭和六二年二月一七日 金一万円

(4) 調査費用として

株式会社生保リサーチセンターに対する支払

昭和六二年三月二七日 金四万九五四〇円

株式会社阪神綜合リサーチセンターに対する支払

昭和六二年三月二七日 金一四万六二五〇円

(5) 中垣一二三弁護士に着手金として支払

昭和六二年三月二七日 金一〇万円

(6) なお、原告会社は、本件訴訟の提起を余儀なくされ、そのための弁護士費用として金三〇万円の支払を要することとなつた。

(7) よつて、原告会社は、被告服部に対し、不法行為に基づく損害金として、右合計金二七六万四七五七円及びこれに対する第一事件訴状送達の日の翌日である昭和六二年六月二七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2 不当利益

(一) 被告服部は、原告会社から休業損害等の名目で保険金の支払を受け(右1(四)(1))、また、原告会社をして前記各医療機関及び被告上野に対する治療費の支払をなさしめて(同(2)、(3))、それぞれ利得し、原告会社は、右同額の損失及び同(4)ないし(6)の損害を被つた。

(二) 被告服部の右利得は、次の各理由により法律上の原因がなく、同被告は、これを知りつつ利得した。

(1) 右1(三)(1)記載のとおり、被告上野と被告服部が原告会社に対し、本件事故の発生日時に関し虚偽の通知を行つたため、原告会社は、被告服部に対し、本件事故による保険金の支払義務を負わない。

(2) 同(2)の記載のとおり、被告服部が本件事故により受傷した事実はなかつたため、原告会社は、右受傷に基づく損害を填補する保険金の支払義務を負わない。

(三) よつて、原告会社は、被告服部に対し、同被告の悪意の不当利得に基づき、原告会社の被つた損失及び損害の返還ないし賠償として、金二七六万四七五七円及びこれに対する第一事件訴状送達の日の翌日である昭和六二年六月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する答弁

1 請求原因1(一)及び(二)は、認める。

2 同(三)(1)イの事実中、約款の存在については認めるが、その内容及び解釈については争う。

同条項の趣旨は、保険契約者または被保険者が事故発生の日時に関する通知を遅滞したことにより、保険会社が事故調査に支障をきたし、あるいは損害拡大防止措置をとる機会を失する等して損害を被つたときは、その被つた損害の限度で損害の填補の責任を免れさせるものである。

3 同ロの事実中、被告上野が原告会社に対し昭和六一年九月一六日ころ、本件事故発生の日を昭和六一年九月一六日である旨の通知をしたことは認めるが、その余は否認する。

4 同(2)は、否認する。

被告服部は、本件事故により真実傷害を負つた。

5 同(四)の事実中、(1)の支払を受けた事実は認め、その余は不知。

6 同2(一)は、不知。

7 同(二)は、否認する。

(反訴について)

一  請求原因

1 事故発生

(第一事件について)の一1(二)と同旨

2 責任

被告上野は、右加害車両を保有していたものであるから、自動車損害賠償保障法三条により、運行供用者として本件事故により被告服部に生じた損害を賠償する責任を負う。

3 受傷内容

被告服部は、本件事故により頸椎捻挫等の傷害を負つた。

4 損害

(一) 休業損害 金三一二万四八〇〇円

休業期間 六か月(昭和六一年九月一八日から昭和六二年三月中旬まで)

得べかりし収入 月額金三六万円

賞与減額分 金九六万四八〇〇円

(計算式)

三六万円×六か月+九六万四八〇〇円=三一二万四八〇〇円

(二) 治療費 金五万八七五五円

(三) 通院慰謝料 金一〇二万円

(四) 後遺障害慰謝料 金九〇万円

(五) 後遺障害による逸失利益 金九一万九〇〇〇円

労働能力喪失期間 三年

労働能力喪失率 五パーセント

得べかりし収入 年額六七三万二〇〇〇円

(計算式)

(新ホフマン式計算法による中間利息控除のための係数を二・七三一〇とする。)

六七三万二〇〇〇円×〇・〇五×二・七三一〇=約九一万九〇〇〇円

(六) 弁護士費用 金三九万円

5 被告上野と原告会社との保険契約

(第一事件について)の一1(一)と同旨

6 被告上野は、無資力である。

7 よつて、被告服部は、原告会社に対し、被告上野に代位して、同被告の原告会社に対する保険金支払請求権に基づき、右損害のうち金四二八万九五八八円及びこれに対する不法行為の翌日である昭和六一年八月一六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二 請求原因に対する認否

1 請求原因1及び2は認める。

2 同3及び4は否認する。

3 同5は認める。

4 同6は不知。

三 抗弁

約款第一章第六条には、被保険者の保険会社に対する保険金請求権は損害賠償責任額について被保険者と損害賠償請求権者との間で判決が確定したとき又は裁判上の和解、調停若しくは書面による合意が成立したときに発生し、これを行使することができる旨規定されている。

四 抗弁に対する認否

明らかには争わない。

(第二事件について)

一  請求原因

1 事故発生及び責任

(反訴について)の一1及び2と同旨

2 受傷内容及び損害

(反訴について)の一3及び4と同旨

3 よつて、被告服部は、被告上野に対し、不法行為に基づく損害金として金四二八万九五八八円及びこれに対する不法行為の翌日である昭和六一年八月一六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1は認める

2 同2は否認する。

三  抗弁

被告服部は、本件事故による損害の填補として左の金員の支払等を受けた。

1 被告上野から合計金一七万二〇〇〇円

2 原告会社から

(一) 休業損害等として合計金二一二万二九六七円

(二) 阪和病院に対する治療費の支払として昭和六一年一〇月一五日に一万九六二〇円及び中本病院に対する治療費の支払として昭和六二年二月九日に一万六三八〇円

四  抗弁に対する認否

1 抗弁1は認める

2 同2(一)は認め、同(二)は不知。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

第一第一事件について

一  請求原因1(一)及び(二)の各事実は、当事者間に争いがない。

二  次に、請求原因1(三)について判断する。

1  被告服部の受傷の有無について

(一) 本件事故により服部車が受けた衝撃の程度

成立に争いのない甲第二六号証、第二七号証、第二八号証(但し、後述の信用できない部分は除く)、第三〇号証及び被告上野の供述によれば、本件事故において、上野車は服部車に続いて発進してから衝突までの間に約三メートル進行したにすぎず、また、当時、被告上野は、前方の交差点を左折しようとしていて、前方約一・三メートルに急停車した服部車を発見した時点での速度は時速約一〇キロメートルにとどまり、その上、服部車の急停止を発見すると同時に自車の急ブレーキをかけたが間に合わず追突するに至つた事実が認められるとともに、服部車が本件事故によつて少なくとも外見上は見るべき損傷を受けなかつた事実も認められるところ、これらの事実に本件衝突により服部車に生じたと推定される計算上の衝撃加速度が〇・七一Gであること(甲第三四号証)を考え併せると、本件事故により服部車が受けた衝撃は軽微なものに過ぎなかつたと言わざるを得ない(甲第二八号証及び被告服部の供述のうち右認定に反する部分は信用することができない)。

(二) 被告服部の通院状況及び医師の所見並びに稼働状況

成立に争いのない甲第一一号証ないし第一六号証、第一九号証、第二九号証、第三一号証の一ないし三甲第三二号証の一及び二、甲第三三号証の一ないし三、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三六号証、第三七号証、成立に争いのない乙第一号証、第八号証、第九号証の一及び二、被告服部の供述によれば、次の事実を認めることができ、被告服部の供述中、この認定に反する部分は信用することができない。

(1) 被告服部は、本件事故後も、昭和六一年九月一六日までの一か月間、全く医師の診療を受けず、また、通常どおり午前八時から遅い日は翌日の午前まで自動車運転の業務に従事していた。

(2) 被告服部は、昭和六一年九月一七日には阪和病院に、同月二六日から同年一〇月二四日までの間のうち四日間中本病院に、同年一一月二一日から昭和六二年一月二八日までの間のうち一四日間医療法人白水会小田医院(以下「小田医院」というに、同年三月三日から同年五月二八日までの間のうち二日間大阪赤十字病院にそれぞれ通院し、阪和病院においては頸部痛を訴え、右側頸筋圧痛。ライトテスト陽性が指摘された外は、頸髄の硬直その他の所見は指摘されず、中本病院においてはなんらの所見も指摘されなかつたが、小田医院においては頸椎背屈制限、腕頸神経叢圧痛、棘上下筋肩甲骨骨間部圧痛が指摘されたものの知覚鈍麻、筋力低下はないものと診断され、大阪赤十字病院では右上肢の知覚障害、腕神経叢圧痛、肩甲骨上角部圧痛、僧帽筋・菱形筋圧痛、右握力低下(左三五キログラムに対し右一三キログラム)が指摘された。これらを通じてみるに、阪和病院においては、ライトテスト(腰かけている患者の腕を外側に持ち上げ、脈が弱くなつたり消失したりしたら陽性という診断法)が陽性という健康人にも間々見られることがある所見以外の目覚・他覚の所見に乏しかつたし、中本病院でも同様であつたのに対し、その後の小田医院、大阪赤十字病院における所見は、不自然に多彩なものとなつている。

(三) 右認定の各事実を総合すると、被告服部の通院はいずれも恣意的なもので、各医師の所見も同被告の訴えをそのまま記載した以上のものではないと考えられるところ、同被告の事故後一か月間の稼働状況からしても、被告服部は本件事故により医師の治療及び休業を必要とするような傷害は負わず、また、同被告としてもそのことを認識していたと言わざるを得ない。

なお、大阪赤十字病院においては、前記諸症状のほかに第四、第五頸椎間の椎間板の狭小が指摘されたが、右診断が事故後五か月以上経過した時点のものであること、それまでの阪和病院、中本病院、小田医院におけるいずれの診断でも右の点について触れられていないことからすると、少なくとも本件事故との関連を認めることはできない。

2  被告服部の原告会社に対する欺罔行為

証人盛田伸彦の証言により真正に成立したものと認められる甲第四号証、第五号証、右証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第八号証の三、前掲甲第一一号証ないし第一四号証、第一九号証、第三一号証の一ないし三、第三二号証の一及び二、被告上野の供述、弁論の全趣旨並びに被告服部の受傷に関する前記認定事実を総合すると、被告服部は、本件事故により見るべき傷害を負つていないにもかかわらず、昭和六一年九月一七日ころ、被告上野をして原告会社に対し、本件事故が同月一六日に発生した旨及びこれにより被告服部が傷害を負つた旨虚偽の通知をさせた上、同月一七日阪和病院において、さらに同月二六日から同年一〇月二四日にかけては中本病院において、いずれも本件事故により傷害を負つた旨虚偽の事実を申し立てて診療を受け、右各医療機関をして原告会社に対し保険金による診療報酬の支払請求をさせたり、右阪和病院の支払の一部につき被告上野に立替えさせて同人をして原告会社に対しその分の保険金支払請求をさせたりした上、昭和六一年一〇月一五日ころから昭和六二年二月二〇日ころにかけて、原告会社に対し本件事故による傷害によつて休業損害等の損害を被つたとの虚偽の事実を報告し、その結果、原告会社において被告服部が受傷し、治療費、休業損害等の損害が発生したものと誤信し、後記の各支払を行つた事実が認められ、右認定に反する乙第二号証の一ないし三、第三号証及び被告服部の供述は、右各証拠及び被告服部の受傷に関する前記認定事実に照らし採用することができない。

3  よつて、被告服部は、原告会社に対する右保険金騙取による不法行為に基づき原告会社に生じた後記損害を賠償する責任がある。

三  損害について

1  請求原因1(四)(1)の各支払の事実は当事者間に争いがなく、証人盛田伸彦の証言、前掲甲第四号証、第五号証、成立に争いのない甲第一二号証、第一四号証、第一九号証によれば、原告会社が同(2)及び(3)のとおりの保険金を支払つた事実が認められる。

2  証人盛田伸彦の証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる第六号証の一及び二、第七号証の一及び二、同証言並びに被告服部の原告会社に対する欺罔行為に関する前記認定事実を総合すると、原告会社が株式会社生保リサーチセンター及び株式会社阪神綜合リサーチに対し被告服部の治療状況、勤務状況等の調査を依頼し、その費用としてそれぞれ金四万九五四〇円及び金一四万六二五〇円を要したものと認められ、右支出は、被告服部の右不法行為と相当因果関係のある損害と認められる。

3  証人盛田伸彦の証言及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第八号証の一ないし三、第一〇号証、同証言並びに被告上野の供述によると、被告服部が昭和六二年二月ころ被告上野に対し本件事故により受傷したとして将来二年分の休業損害、慰謝料等として金五〇〇万円を要求してきたので、被告上野が示談代行の権限を与えていた原告会社は、被告上野の代理人として中垣一二三弁護士を選任し、被告上野の名で生野簡易裁判所に調停を申し建てた事実が認められるところ、これに被告服部の原告会社に対する欺罔行為に関する前記認定事実を併せ考えると、右に要した弁護士費用は、被告服部の右本件不法行為と相当因果関係にある損害と認められる。

4  本件事案の内容、審理経過、結果等に照らすと、原告会社が本件訴訟のために要した弁護士費用として支払が必要となつた金三〇万円も、被告服部の不法行為と相当因果関係のある損害として認められる。

第二反訴について

一  請求原因1及び2は当事者間に争いがない。

二  請求原因3及び4について

第一事件について認定したとおり、本件事故による被告服部の受傷は証拠上認め難く、請求原因3及び4の事実は認められない。

三  よつて、その余の点について判断するまでもなく、反訴請求は理由がない。

第三第二事件について

一  請求原因1は当事者間に争いがない。

二  請求原因2について

第一事件について認定したとおり、本件事故による被告服部の受傷は証拠上認め難く、請求原因2の事実は認められない。

三  よつて、その余の点について判断するまでもなく、第二事件の請求は理由がない。

第四結論

以上の次第であるから、原告会社の第一事件請求は理由があるからこれを認容し、被告服部の反訴及び第二事件の各請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 林泰民 松井英隆 佐茂剛)

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